GaRiYa Essay

サンちゃんまた私に、来るんだよ! vol.289

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    丸かった顔はトンがって、クリクリだった目は細めになって、フッサリだった被毛はペションとなって、柔らかだったボディからはゴツゴツした骨の感触…それが今のサンちゃんです。

    ここ半年ほどでしょうか、サンちゃんは私の肩にピタリ頭を寄せて、すがりつくような格好で眠るのでした。

    膝に乗る時もそうでした。
    隠れ場所を探すみたいに、顔をグリグリ埋めてくるんです。
    診察台に乗せられた時と同じ仕草です。

    キーボードの手を休めて上着の前を開き、そんなサンちゃんを隠すように包み込んだものでした。

    愛しさが、私の中に充満します。
    充満したまま出口を失い、腹に、胸に、背に、両腕に、肩に、喉に、目に、鼻に…ジ〜ンジ〜ンジ〜ンジ〜ン…疼痛となって、響くのです。

    「もって、一週間でしょうね」
    今朝がた獣医さんから言われた言葉です。転院して少しは希望を持っていたのに、あっさりアウト。
    要するにサンちゃんは今、危篤状態にあるわけです。
    しかしここに至って、苦しみはマッタク見せません。
    それが、どれほどの救いであることか。

    まあよく、眠ること眠ること。
    柔らかな猫ベッドで寛ぐように、表情がとても穏やかです。
    もうこのまま逝っちゃうのかな…と思いながら、私はパソコンに向かっていました。

    ところがなんと、いきなりヨロヨロって立ち上がって、ウロウロウロウロ…
    「サンちゃん何?どこ行きたいの?」
    「…………………………………」
    もう声は無く、目も開きません。
    でも、何かを探している様子です。
    「どこ行きたいの?」
    「…………………………………」
    それで膝に乗せたところ…ビンゴ!

    というわけで、サンちゃんは今、私の膝で眠っています。
    もちろん、この体位でキーボードを叩くのってけっこうしんどいんです。でも長年の習慣です。慣れているんです。

    キーボードの手を休めては、繰り返しこう、話しかけています。
    「私もいつか行くから、待ってるんだよ。もし待ちきれなくなったら、また必ず私のところに来るんだよ。またきっと会えるよ。いっときだけのサヨナラだよ」

    そうなんです。サヨナラしても、いっときなんです。
    そもそも、これほど強い絆で結ばれた者たちに、永久の別れなどあろうはずもなく。

    真実、シルクちゃん(サンちゃんのパパ、十六年と二ヶ月前に他界)は死んでしまってからも、色んなやり方で私を励まし続けてくれました。
    でもシルクちゃんの本当のエールは、サンちゃんだったような気がしてます。
    「猫がそこまでやるか?」
    と思われるでしょうが、やったんです。自分の身代わりに置いていったんです。

    姿だけでなく、やることなすことソックリで、いつ頃からか、サンちゃんがシルクちゃんに重なり、シルクちゃんがサンちゃんに重なり、一匹の猫になりました。
    九歳+十六歳=二十五歳。

    つまり一匹の白猫が、四半世紀余りを私にピタリ、寄り添ってくれたのです。

    サンちゃんはこの翌日の
    2月9日(日)夜
    眠ったまま、旅立ちました。

    (長澤 由起子)

    写真キャプション►仕事する私のノートパソコンは、サンちゃんの枕でした。
             いつもいつも、そばに居てくれました。