GaRiYa Essay

カタメちゃんのファン!!Vol.29(通算Vol.319)〜マイ スウィートライフ ウィズ キャッツ〜

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    朝、階段を降りながら、チラリと玄関に目をやリます。
    ガラス越しにムー(夢)の黒い影が映れば右折して玄関へ。
    なければ左折してキッチンです。

    この冬は右折→玄関の朝が続きました。ムーが朝ごはんを食べに来るからです。

    「おはようムー」
    「……」
    「元気?」
    怪我してないか、病気してないか、まずは健康のチェックです。
    そして、部屋に誘います。
    「入って食べようよ」
    「…」
    「寒いから入ろうよ」
    「にゃ」

    たぶん用事でもあるのでしょう。入ってもそう長居はいたしません。しばらく寛いだら出ていきます。
    日が暮れると、我が家から少し離れた所にある、高架線の下に帰ります。

    そこはムーの城。


    コンクリートの塊や古い看板やパイプが無造作に積まれ、中古のバイクや自転車、時にはボートも混じります。
    金網製の塀が、そんなガラクタたちをシッカリ取り囲みますが、さすが猫ですね、そこを難なく出入りします。

    仕事帰り、よく目にしていたのは、そんなガラクタの前でポツンとうづくまるムーでした。とても小さく見えました。
    「うちにおいで!」
    と声をかけるのですが
    「にゃ〜」
    動きません。

    実は、動きたくない理由があったのです。
    エサやりさんたちを待っていたのです。

    Oさん(エサやりさん)の言葉でわかったのですが
    「カタメちゃん、ファンが多いんですよ〜」
    なんと、右の眼球を失って以来
    「カタメちゃん」
    と呼ばれて、愛されていたのです。

    様々な苦難を乗り越えながら、凛として孤高なカタメちゃん…ファンになる気持ちはわかります。

    少し時を経て、またOさん曰く。
    「カタメちゃん、最近ますますファンが増えたんですよ!」
    理由は単純。フッサフッサになったからでした。
    「そりゃ私のおかげだろ?」
    と言いたいところでしたが、グッと我慢。

    記憶は、前の夏に遡ります。
    「…にゃ」
    久しぶりに現れたムーは、重度の皮膚病に苦しむ病猫でした。
    「ダニですね〜」
    と、T先生。

    なりゆき、ひと月ほど我が家に閉じ込め
    て、治療に専念させていただきました。
    その甲斐あってかすっかり新毛に生え替わり、フッサフサになったというわけです。

    そして、事件です。
    カタメちゃんが、姿を消しました。
    そろそろひと月になります。

    高架線の下を通れば、カタメちゃんが待っている気がして
    「ムー! ムー! ムー!」
    と、叫んでしまいます。
    ズキッと、胸が痛みます。私も、カタメちゃんの大ファンだったのです。

    朝、カタカタと階段を下りながら、チラリと玄関に目をやる習慣は、今もそのまんまです。
    朝ごはんの用意も、そのまんまです。

    ファンたちも
    「カタメちゃんが戻ってきた時、食べられるように」
    と、高架線下のフード置きを、欠かさないそうです。