GaRiYa Essay

年の瀬 人情ばなし 一枚のごまさば Vol.28(通算Vol.319)〜マイ スウィートライフ ウィズ キャッツ〜

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    ドライフードの栄養バランスには素晴らしいものがありまして
    「うちの子には♥♥しか与えていません」
    とおっしゃる声を、よく耳にします。
    しかし、これがヒトなら…というか、もし自分ならどうでしょう。非常食の乾パンと水だけで一生を送るようなもんですよね。
    少なくとも私は、いかにプリプリ肌になろうと、健康によかろうと…イヤです!
    そういう理由から、グルメな猫フード作りを心がけているものの、なにしろうちは大家族。しかもお客様(野良様)もチョクチョクいらっしゃいます。


    そこで宴会に招ばれれば、皆様のお席を周って
    「猫ちゃんのお土産に、頂きま〜す」
    と、食べ残しの魚肉料理(塩分等は湯洗)を集めたりとか
    「C店は賞味期限切れ直前の半額フードセールあり。こまめに行くべし!」
    とか
    「鶏肉ならS店。胸肉一キロ380円!」
    とか
    「魚はE店。閉店間際の投げ売りセールを狙うべし!」
    …とか、限りある予算の中でけっこう上手にヤリクリっているわけですが、特にE店の【投げ売りセール】漁りは、帰宅途上と
    いうこともあって、日課となり

    「大漁だ〜」
    と喜ぶ日あり
    「不漁だ〜」
    と打ちひしがれる日ありで、気分はほとんど漁師さんです。
    漁師さんは天候に左右されます。
    たとえば、嵐の日は客足の引けが早く、ちょっと命がけですが、ほぼ大漁。
    そうして手に入れた様々な魚を、煮たり焼いたり揚げたりして
    「おいしい?」
    「フンニャ、フンニャ、フンニャ…」
    …この食音が、タマリマセン。
    そういうわけで、私が狠猷爾乙だけ狙いの客〞というのは従業員さんたちから認知されるようになりまして…たぶん、狄べ盛りの子供たちを抱えて、働きながら頑張っている主婦〞のように思われていたのではないでしょうか。
    また私のほうも実は、そんなかんじに振る舞っていたのです。
    と申しますのも
    「猫たちが喜びます!」
    と言った瞬間
    「ヒトが召し上がっても、じゅうぶん美味しいんですが…」
    と、ガッカリされた記憶があるからです。
    ところがこの十二月、いきなり不漁が続きました。
    「ごめんね、お魚、今日も無かったの」
    「…ニャ」
    「明日は頑張るからね!」
    「ニャ〜!」
    しかし、不漁はその後も続きました。
    ボ〜ゼンと立ちすくす私に、従業員Sさんが耳打ちしました。
    「人手不足で、最近ちょっと早目に値段を落としてるんです。それで、売り切れるのが早くなったんです」
    なるほどでした。
    ここでついにカミングアウトです。
    「家にたくさん猫が居るんです。猫たちが魚、すごく喜ぶんです。でもこの頃、ずっと魚が食べられなくて……」
    「猫ちゃん…ですかあ…」
    立ち去ろうとしたら、厨房からSさんが呼び止めました。
    「猫ちゃん、ごまさば、好きですか?」
    その手にシッカリと、一枚のごまさばが握られていたのです。
    しかもそれは、ご自宅用に購入するための爐取り置き〞でした…。


    その昔牋貲佞里けそば〞なんて、年の瀬の人情話が話題になりましたが、こちらは牋賈腓里瓦泙気〞です。
    とても足りる量ではありませんでしたけれど、ココロだけはホッコリ満たされて、元気をもらえた一枚でした。
    世界は、こころ優しい人々で溢れています。
    隠していても、動物たちの前ではバレバレです。
    そんな動物たちを通じて、今年もさまざまな人々の温かさにふれることができました。
    ありがとうございました…。